みなさん「エリン・ブロコビッチ」という映画はご覧になりましか?
主演はジュリア・ロバーツ。実話をもとにした映画であり、学歴も職歴もない子持ちの無職の女性が、大企業の工場が有害物質を垂れ流しにしている事実を突き止め、訴訟に勝つといった大逆転ストーリー。
この工場周辺に住む住民たちは、有害物質によって重い病気に侵されているのですが、まさにこの映画に近い内容が今アメリカで起こっているのです。
その場所は、アメリカのミシガン州フリント。五大湖エリアに含まれる地域で、ミシガンとはインディアンの言葉で“Great Lake”とのこと。水に縁のある場所ということが良くわかりますね。
このミシガン州フリントに、非常事態宣言が出されたのが今年の1月。
新聞などでご存知の方もいるかもしれませんが、基準値を1000倍以上も上回る鉛が水道水から検出されたというのです。
鉛は中枢神経に作用し、精神障害や学習障害などを起こすほか、最悪の場合死に至ることも。
江戸時代、上流階級の女性たちは鉛を含んだおしろいを塗っていたことから、鉛中毒を発症する人々が多かったとも言われています。
そんな鉛の水道水への安全基準含有率は10ppb~15ppb。しかし現在フリントでは少ないところでも20ppb強、多いところでは400ppb近い数値が検出されたというのです。
このフリントの水質汚染問題は、格差社会が生んだ被害とも言われているのですが、その理由はフリントがお金のない破綻自治体だったため。
これまでフリントは隣接するデトロイトから上水の供給を受けてきましたが資金難で利用料が払えなくなり、デトロイトから水を供給してもらえなくなったのです。
このためフリントは、やむなく水の供給源を市内を流れる「フリント川」へとシフトしたのですが、これによって鉛が検出されることに。フリント川自体の水は鉛に汚染されていなかったのですが、水質自体は最悪なものだったのです。
フリント市周辺にはゼネラルモーターの工場が複数あり、市民の多くがこちらで勤務。その工場から排出される排水や、冬場大量に使用される除雪剤が流れ出したフリント川の水の成分が、水道管を腐食させたのではないかとの見解がいまのところ濃厚です。
現在ミシガン州ではこの問題に対して、2つの訴訟が起きているとのこと。
アメリカ全土が注目する大規模訴訟となっており、まるで映画さながら。エリン・ブロコビッチのように映画化されるかもしれません。
ちなみにフリントには民間企業から無償で飲料水が支給されているため、飲み水には困っていませんが、水道管を補修する費用はなく、あくまでも応急処置といった状態の模様。
ある日突然水道水に毒が混入しているなど考えられませんが、実際に起こっていることです。
市民の大半が勤務する工場から排出される排水によって、自分たちの生活が脅かされるというのは、水が循環していることを体言しているのではないでしょうか。