海の砂漠化をもっと身近な問題に

「陸の砂漠化」は地球温暖化とセットで考えられることが多く、皆さんも身近な問題としてご存じでしょう。
しかし「海の砂漠化」問題は、あまり耳にしたことがないかもしれません。
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地球上の約71%は海。
このように地球規模で考えると陸地面積の方が圧倒的に少く、また実際に、大多数の人間が生活を営む場所は陸地です。
しかも近い将来には、世界の4分の1の陸地が砂漠化するとのこと。
居住場所の問題や砂による被害は、身近で深刻な問題だと言えるでしょう。

しかし人間は、自分の身近な場所や環境にほど関心が高いからこそ、陸の環境問題ばかりを考えているのではないでしょうか。
日本人が日本のニュースは身近に感じたとしても、海外のニュースはどこか別次元の話に聞こえてしまう。
そんなことが、海の砂漠化問題を身近に感じない理由なのかもしれません。

50万種類以上もの生物が暮らす地球上の海。
その海を守っているサンゴ礁が死滅してしまう「海の砂漠化」は、一体何を意味しているのでしょうか。

「サンゴ」と一口に言っても、宝石として珍重される種類や単体で生息するものなど、様々な種類のサンゴがいます。
なかでも成長が比較的早く、石灰質の固まった骨格を持つサンゴの集まりを、「サンゴ礁」と呼ぶのです。coreal_child

熱帯地域の海には、直径2メートル近くもあるサンゴ礁が群れを成していますが、なかには1年に数センチしか成長しない物もあります。
このように考えると、これまで何千年もかけて育ってきたサンゴ礁は”生きる骨董品”。
こんな貴重なサンゴ礁が今、猛スピードで「白化」しているのです。

サンゴ自体は光合成を行っておらず、体内に生息する「褐虫藻」と呼ばれる藻が光合成を行っています。
しかし、海中の温度が上昇したり、サンゴ自体が何らかのストレスを感じるようになると、褐虫藻はサンゴの体内を離れてしまうことに。
サンゴから褐虫藻の色素が抜けて白くなり、さらには光合成の出来なくなったサンゴは、自力では活動が不可能になる。
これが「白化」なのです。

生態系のサイクルとしては何ら問題の無い行動であり、白化したからといって、イコール「死滅」ではありません。
ただ、白化が続いたり白化を繰り返したサンゴの生命力は、どんどんと弱まっていくため、死滅する可能性が高いのです。

しかも白化が大きな問題となったのは、1990年代後半から、サンゴ礁規模での白化が起こったため。
サンゴ礁という大きなサンゴの群れが一気に白化することは、通常あり得ません。
しかし、温暖化による海水の上昇や、埋め立てなどの開発時に海へと流れ込む土壌、
そして工場からの汚染物によって多くのサンゴがストレスを受け、サンゴ礁ごと白化してしまったのです。

もし白化したサンゴ礁がそのまま死滅してしまえば、海底に大量の死骸が降り注ぐことに。
光合成によって生育する海藻や新しいサンゴは、死骸によって太陽の光を遮られ、海の仲間によって生育を阻止されるのです。Airplane over ocean.
またサンゴには、海中の二酸化炭素バランスを保つ役割もあります。
陸の砂漠化同様に、海の二酸化炭素濃度が高くなったとしたら。
その答えは、みなさんわかりますよね。

陸の砂漠化の原因は人的な問題だと「砂漠化対処条約」が位置づけているように、海の砂漠化も同じく、原因は人間でしょう。
ネットや輸送システムによって世界と身近になった昨今。
もっと環境問題も、グローバルな視点で考えてみる必要があるのではないでしょうか。