日本が抱える井戸と地下水のバランスとは?

IDO日本国内の都市部に住むとコンビニやスーパーなどで飲用水を買うことはもはや当たり前となっており、井戸水から水を汲んで飲んだ経験がある方のほうが少ないのではないでしょうか。
しかし、東京・大阪・名古屋の都市部であっても未だに現役で活躍している井戸はあります。
知られていないだけであり、災害などの緊急時用に区や市が管理している井戸が複数あるなど、使おうと思えば使える井戸もまだまだたくさんあるのです。

しかも都市部を離れると、筑後川の流れる福岡県や名水百選に選ばれる水源の多い四国エリアでは井戸水のみで暮らす地域もまだまだ存在します。
現に高松市では水事情の悪化問題を考慮して井戸水を有効活用しようと、井戸の水質検査料を2013年から半額にするといった動きもありました。

このように、井戸は水資源が豊富な日本では昔から生活用水として利用されてきたのですが、高度経済成長期の60年代から70年代にかけて、生活用水だけでなく工場用水としても大量に地下水が井戸から汲み上げられたことにより、地盤沈下の問題が急浮上。
そのため国によって地下水の汲み上げが非常に厳しく規制され、地下水からシフトして現在のように河川の水を生活・工場用水として利用するようになりました。FORTUNE

そもそも「井戸水」は地下深くで脈々と流れ続ける「地下水」を人工的に掘削して作られた井戸から汲み上げたもの。
かつて人類は自然の川の水やこんこんと湧き出る湧き水を生活用水として利用してきたのですが、綺麗な水を得るための知恵として生み出された人工物が井戸なのです。

命の源でもある水を常に得ることのできる井戸は神聖化されたり、井戸端会議と呼ばれるような地域のコミュニケーションの場となるなど、日本文化を作り上げてきた源でもあるのですが、使い過ぎによってこの文化が衰退してしまったのです。

そんな21世紀の今、新たな問題が急浮上。
それが地盤沈下ならぬ地盤浮上であり、地下水を使わなくなったために今度は反対に水位が上がってきてしまっているのです。
都心部は地下深くに地下鉄や商業施設を新設していますが、水位の上昇によって工事が大幅に遅れるほか、地上の建物が傾くといった影響も問題視されています。

それでは河川利用から地下水利用へ戻した方が良いと考える方も多いのですが、またここで新たな問題が。
それが硝酸性窒素による地下水汚染の問題であり、排水などによって地下水は年々汚染され続けており、発がん性物質のもととなる六価クロム・トリクロロエチレン・テトラクロロエチレン等が地下水のなかに溶け込んでいるのです。ウォーターボトル2本1

もちろんこれらの化学物質を取り除くことは可能であり、ハワイウォーターでも使用されているRO浄水器がこれらの問題を解決する機器ではあります。
ただ、汲み上げた生活用水用の地下水すべてにROろ過を行うことは、予算や設備面からも現実的ではありません。

普段何気なく水道から出る水が、実は川から来て川に帰る。
当たり前のことではありますが、井戸であればもっとダイレクトに水のありがたみを感じることができたのかもしれません。
井戸が水道に変わったことによって、文化だけなくありがたみも失われてしまったのではないでしょうか。